バイクを愛する多くのライダーが一度は憧れる「ヨシムラ」のパーツ。特にマフラーは、その象徴的な存在として知られています。では、ヨシムラのマフラーはなぜこれほどまでに人気を集め続けるのでしょうか。
この記事では、ヨシムラというブランドが持つ伝説的な歴史や、盟友ともいえるスズキとの関係性に触れながら、その人気の秘密に迫ります。伝統的なショート管をはじめとする製品の性能的な特徴、そして気になる値段がなぜ高いのかという理由まで、多角的に掘り下げていきます。
また、実際の評判として「うるさい」という声は本当なのか、逆に音量を静かにしたい場合はどうすれば良いのか、さらには車検違反にならないための注意点など、ユーザーが抱える具体的な疑問にも丁寧にお答えします。

ヨシムラ公式
- ヨシムラが伝説と呼ばれるに至った歴史的背景
- 性能や音質に関する具体的な評判と特徴
- 価格設定や車検(違反)に関するユーザーの疑問点
- 現代におけるヨシムラマフラーの本当の人気と評価
伝統と革新!ヨシムラマフラーはなぜ人気なのか
この章のポイント
- POP吉村が築いたヨシムラの歴史
- 伝説的なヨシムラとスズキの関係性
- ヨシムラマフラーが持つ性能的な特徴とは
- 集合管の元祖であるヨシムラのショート管
- 実際のヨシムラマフラーの評判を解説
POP吉村が築いたヨシムラの歴史
ヨシムラの人気を語る上で、創業者である故・吉村秀雄(通称:POP吉村)氏の存在は欠かせません。彼の情熱と卓越した技術力が、今日のヨシムラブランドの礎を築きました。
もともと福岡で「ヨシムラモータース」を始めた吉村氏は、戦時中に航空機関士として培った技術をバイクのチューニングに注ぎ込みます。その腕前は、当時のお客さんであった米兵たちの間で評判となり、親しみを込めて「POP(おやじさん)」と呼ばれるようになりました。

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彼の名を一躍有名にしたのが、ホンダCB72やCB77といった市販車をベースにしたチューニングです。メーカー自身が手掛けたマシンを上回る性能を引き出したことで、ホンダの創業者・本田宗一郎氏さえもその実力を認めました。
しかし、その後の関係性の変化を経て、POP吉村は活躍の場をアメリカへと移します。そこで数々の苦難を乗り越えながら、カワサキZ1などのチューニングで名を馳せ、世界的な評価を確立していきました。彼の不屈の精神と、常に最高の性能を追い求める姿勢こそが、「ヨシムラ伝説」の原点と言えるでしょう。
伝説的なヨシムラとスズキの関係性
「ヨシムラといえばスズキ」というイメージを持つライダーは少なくありません。この強固なパートナーシップは、1970年代後半に始まり、今日まで続いています。
ホンダとの関係が変化した後、POP吉村が次なる可能性を見出したのが、当時4ストロークエンジン開発の後発だったスズキのGS750でした。バイク雑誌に掲載されたエンジン透過図を見ただけで、その潜在能力の高さを見抜いたと言われています。
この出会いをきっかけに、ヨシムラはスズキのマシンのレース開発に深く関わるようになります。そして1978年、記念すべき第1回鈴鹿8時間耐久ロードレースにおいて、ヨシムラがチューニングしたスズキGS1000が劇的な優勝を飾りました。これは、巨大メーカーであるホンダの威信をかけたイベントで、一介のチューニングショップが勝利を収めるという歴史的な快挙でした。
スズキは、ヨシムラの高い技術力を尊重し、対等なパートナーとして協力関係を築き続けています。レース活動における共同参戦はもちろん、市販車においてもヨシムラのパーツを前提とした開発が行われることもあります。このようなビジネスライクでありながらも熱い信頼関係が、両社のブランド価値を高め、「ヨシムラを付けたいからスズキのバイクを買う」というライダーを生み出す要因の一つになっています。
ヨシムラマフラーが持つ性能的な特徴とは
ヨシムラマフラーが選ばれる最大の理由は、その卓越した性能にあります。単に音や見た目を変えるだけでなく、バイク本来のポテンシャルを最大限に引き出すことを目的に開発されています。

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パワーとトルクの向上
ヨシムラのマフラーは、シャーシダイナモによるテストとライダーによる実走テストを幾度となく繰り返し、全域でスムーズかつ太いトルク特性を追求しています。特に、常用域での扱いやすさを重視しながら、高回転域まで気持ちよく吹け上がるパワーフィールを実現。多くの製品は、純正のECUセッティングのままで最適な性能を発揮できるよう設計されています。
軽量化とマスの集中化
素材にもこだわりがあり、ステンレスや軽量なチタンが積極的に採用されます。これにより、純正マフラーから大幅な軽量化を達成。特に車体の後方に位置するマフラーが軽くなることで、重心が中央に集まる「マスの集中化」に貢献します。その結果、切り返しが軽快になったり、コーナリングが安定したりと、バイクの運動性能が明らかに向上することを体感できます。
手曲げと機械曲げ
ヨシムラには、職人が手作業でパイプを曲げる「手曲げ」と、機械で精密に加工する「機械曲げ」の2種類の製法が存在します。
製法 | 特徴 | メリット | デメリット |
手曲げ | バーナーで熱したパイプを職人が曲げる伝統的な製法 | 滑らかで美しい曲線を描き、独特の温かみと高級感がある | 生産に時間がかかり、価格が高くなる傾向がある |
機械曲げ | NCベンダーで精密に曲げ加工を行う現代的な製法 | 均一な品質で大量生産が可能。複雑な取り回しにも対応できる | 手曲げほどの有機的な曲線は出しにくい |
このように、製法の違いによってもマフラーの特性や見た目の印象が変わるため、ライダーは自身の好みやバイクのスタイルに合わせて選ぶことが可能です。
集合管の元祖であるヨシムラのショート管
現在では当たり前になった4気筒エンジンの「4-1集合管(ショート管)」ですが、これを世界で初めてバイク用に開発したのがPOP吉村です。
1971年、アメリカのレースに参戦するにあたり、POP吉村はマシンの軽量化を目的として、4本あったエキゾーストパイプを1本にまとめることを考案しました。当時はまだ排気脈動効果など理論が確立されていなかったため、純粋に軽くするためのアイデアだったのです。
ところが、完成した集合管を装着してテスト走行をしてみると、軽量化以上にエンジンのパワーが明らかに向上していることが判明します。これは、各気筒から出る排気の波が互いに干渉し、排気効率を高める「排気脈動効果」によるものでした。
この「偶然の発見」から生まれたヨシムラの集合管は、レースシーンで圧倒的な速さを見せつけ、アメリカのバイクシーンに集合管ブームを巻き起こしました。言ってしまえば、ヨシムラのショート管は、その後のバイクカスタムの歴史を大きく変えた発明品であり、今なお多くのライダーを魅了する伝説のパーツなのです。
実際のヨシムラマフラーの評判を解説
ヨシムラマフラーは高い人気を誇る一方で、様々な評判や意見が存在します。ここでは、良い評判と、購入を検討する際に気になる点を合わせて紹介します。

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良い評判
多く聞かれるのは、やはり性能と品質の高さです。取り付け精度の高さから、DIYでの交換作業もスムーズに行えるという声は少なくありません。また、性能面では「低速トルクが太くなった」「高回転での伸びが良くなった」といった体感しやすい効果が評価されています。
音質に関しても、ただ音が大きいだけでなく、「上品で深みのあるサウンド」「長時間乗っても疲れない音」といった好意的な意見が多数を占めます。
気になる評判
一方で、ネガティブな意見として挙げられがちなのが価格です。品質や性能を考えれば納得できるものの、他のメーカーや海外製の安価な製品と比較すると、高価であることは否めません。
また、デザインに関しては、「最近のバイクのデザインには合わないことがある」「海外メーカーの洗練されたデザインの方が好み」といった声も一部で見られます。特に、エッジの効いた最新のスーパースポーツなどでは、他の選択肢を検討するユーザーもいるようです。
このように、伝統と実績に裏打ちされた高い評価がある一方で、価格やデザインの好みによって評価が分かれる側面も持ち合わせています。




ヨシムラマフラーはなぜ人気?現代の評価と疑問
この章のポイント
- ヨシムラはなぜ高い?その値段の理由
- ヨシムラマフラーは本当にうるさいのか?
- マフラー音量を合法的に静かにしたい場合
- ヨシムラマフラーは車検違反になるのか
ヨシムラはなぜ高い?その値段の理由
ヨシムラマフラーの価格設定に「なぜ高いのか」という疑問を持つ方は少なくありません。その理由は、製品が生み出されるまでの徹底したこだわりと、購入後のサポート体制にあります。
第一に、素材へのこだわりが挙げられます。軽量で錆びにくく、美しい焼け色が特徴のチタンや、高品質なステンレス(SUS304)を惜しみなく使用しています。特にレース用のハイエンドモデルでは、加工が非常に難しいとされる「64チタン」といった特殊な素材を使うこともあり、これがコストに反映されます。

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第二に、開発に時間とコストをかけている点です。単に形を作るだけでなく、車種ごとにシャーシダイナモでの性能測定と、プロライダーによる実走テストを繰り返します。理想のパワーグラフと乗り味を実現するために、無数の試作品が作られては破棄されることも珍しくありません。
第三に、職人技と品質管理です。前述の通り、手曲げマフラーは熟練の職人が一本一本手作業で製作しており、その技術料は価格に含まれます。また、溶接のビード(溶接痕)の美しさに代表されるように、製品の隅々にまで行き届いた厳しい品質管理が徹底されています。
最後に、充実したアフターサービスも理由の一つです。ヨシムラのストリート用マフラーには2年間の製品保証が付帯しており、万が一の不具合にも対応してくれます。このような目に見えない価値や安心感が、ヨシムラの値段を構成しているのです。
ヨシムラマフラーは本当にうるさいのか?
「ヨシムラ=爆音・うるさい」というイメージは、特にバイクに詳しくない方や昔のイメージを持つ方に根強く残っているかもしれません。しかし、現在のヨシムラが販売する公道用マフラーの実態は大きく異なります。
まず、現在日本国内で正規に販売されているヨシムラのストリート向けマフラーは、そのほとんどが「政府認証マフラー」です。これは、JMCA(全国二輪車用品連合会)が定める騒音規制や排出ガス規制といった保安基準をクリアしている証です。製品には認証プレートがリベットで留められており、合法的なパーツであることを示しています。
そのため、新品を正しく装着した状態であれば、決して「うるさい」と感じるような、いわゆる迷惑な爆音になることはありません。

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ではなぜ「うるさい」という評判が生まれるのでしょうか。その理由の一つに、音質の変化が考えられます。ヨシムラのマフラーは、純正品に比べて低音が強調された、迫力のある音質にチューニングされています。この迫力あるサウンドを「うるさい」と感じる人がいるのかもしれません。
また、マフラーは長期間使用すると、内部の消音材であるグラスウールが劣化・飛散し、徐々に音量が大きくなることがあります。中古品を購入した場合や、長年同じマフラーを使い続けている場合に、新品時よりも音が大きくなっている可能性は否定できません。
要するに、現在の政府認証品に関しては「うるさい」のではなく、「迫力と深みのある音質」と表現するのが適切であり、保安基準の範囲内で心地よいサウンドを楽しめるように設計されています。
マフラー音量を合法的に静かにしたい場合
ヨシムラならではのサウンドは魅力ですが、「もう少し音量を抑えたい」「早朝や深夜の住宅街では気を遣う」といった理由から、合法的に音量を静かにしたいと考えるユーザーもいます。
そのようなニーズに応える製品として、ヨシムラ自身も近年、静粛性を重視したマフラーを開発しています。代表的な例が、ホンダCT125ハンターカブ用に開発された「タクティカルサイクロン」です。このマフラーは、従来のストレート構造ではなく、純正マフラーに近い「隔壁構造」を採用することで、アイドリング時の音量を純正同等レベルに抑えつつ、回転を上げた際にはヨシムラらしい心地よいサウンドが楽しめるように設計されています。アウトドアや住宅街での使用を想定した、新しいコンセプトの製品と言えます。
一方で、安易な方法で音量を下げようとすることには注意が必要です。例えば、汎用のインナーサイレンサー(バッフル)を排気口に詰め込むといった方法は、排気効率を著しく悪化させ、エンジンの性能低下や、最悪の場合はエンジンブローに繋がる危険性があります。
もし音量について悩みがある場合は、まず経年劣化による音量増大の可能性を考え、ヨシムラが提供するリメイクサービス(消音材の交換など)を検討するのが最も確実で安全な方法です。自己判断での改造は避け、専門家やメーカーに相談することが大切です。
ヨシムラマフラーは車検違反になるのか
ヨシムラマフラーへの交換を考えた際に、多くの人が気にするのが「車検に通るのか」という点です。これは非常に重要なポイントですが、結論から言えば、適切な製品を正しく使用していれば問題ありません。

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政府認証マフラー(JMCA認定)
前述の通り、現在販売されている公道用ヨシムラマフラーには、保安基準に適合していることを証明する「政府認証プレート」が付いています。このプレートが付いたマフラーを、適合車種に正しく装着していれば、そのまま車検に合格します。改造申請などの特別な手続きは不要です。
車検で注意すべきポイント
ただし、以下のようなケースでは車検に通らない可能性があるため注意が必要です。
- 経年劣化による音量超過: 長年の使用で内部の消音材が劣化し、規定値以上に音量が大きくなっている場合。
- 排気漏れ: エキゾーストパイプとエンジンの接合部や、サイレンサーとの接合部のガスケットが劣化し、排気漏れを起こしている場合。
- 触媒(キャタライザー)の有無: 排出ガス規制が適用されるモデル(主に2008年以降)では、マフラー内に触媒が内蔵されている必要があります。触媒がないレース用マフラーなどは公道使用不可であり、車検にも通りません。
- 不正な改造: 認証マフラーであっても、バッフルを抜いたり、内部構造を加工したりした場合は違反となります。
中古でマフラーを購入する際や、長年使用したマフラーで車検を受ける際には、特にこれらの点を確認することが大切です。正しく製品を選び、適切なメンテナンスを行うことが、安心してバイクライフを楽しむための鍵となります。




結論:ヨシムラマフラーはなぜ人気なのか
この記事で解説してきた内容を基に、ヨシムラマフラーがなぜ人気なのか、その理由をまとめます。
- 創業者の「POP吉村」が築いた伝説的なブランドストーリーがある
- ホンダを唸らせ、スズキと共にレースで勝利した歴史を持つ
- スズキとは半世紀近く続く強固なパートナーシップを築いている
- 職人技による「手曲げ」は芸術品とも評される品質を誇る
- 軽量化とマスの集中化によりバイクの運動性能が向上する
- 全域で扱いやすいトルク特性と高回転の伸びを両立している
- 世界で初めてバイク用集合管(ショート管)を開発したパイオニアである
- 現在の公道用マフラーは政府認証を取得しており車検に対応している
- 「うるさい」のではなく「迫力がありつつ上品な音質」が特徴である
- CT125用など静粛性を重視した新しいコンセプトの製品も登場している
- 価格が高い理由は高品質な素材や開発コスト、職人技にある
- 取り付け精度の高さや2年保証など品質とアフターサービスが充実している
- レースシーンでの活躍がブランドイメージを確固たるものにしている
- 伝統を重んじつつも、常に最高の性能を追求する革新性を持つ
- バイクの価値そのものを高める所有感と満足感を与えてくれる