ダックス125(Dax125)の個性的なデザインと取り回しの良さは魅力的ですが、ツーリングに出かけると燃料タンク容量の小ささが気になることはありませんか。満タンで何キロ走れるのかという航続距離への不安から、タンク容量アップの加工や、ビッグタンクへの交換、あるいはサブタンクの自作といったダックス125のタンク容量増設を検討している方も多いのではないでしょうか。この記事では、手軽な携行缶の活用から、本格的な予備タンクの増設方法まで、それぞれのメリットとデメリットを詳しく解説します。あなたのバイクライフに最適な解決策を見つけるための情報を提供します。

HONDA公式
- ダックス125の純正タンク容量と実際の航続距離の目安
- 携行缶や市販サブタンクを利用する手軽な対策
- 本格的なタンク増設方法(加工、ビッグタンク化、自作)の比較
- タンク増設時に発生しうるトラブルと、その具体的な対策
ダックス125タンク容量増設の必要性と基本情報
この章のポイント
- 純正の燃料タンク容量は3.8L
- 満タンで何キロ?航続距離の目安
- ツーリングの安心材料となる携行缶
- Gクラフト製などの予備タンクの利点
純正の燃料タンク容量は3.8L
ダックス125の燃料タンク容量は3.8Lです。これは、兄弟車であるスーパーカブC125の3.7Lとほぼ同等の容量であり、街乗りを主眼に置いた設計であることがうかがえます。
この容量は日常的な通勤や近距離の移動では十分機能しますが、一方でツーリングなど長距離を走行する際には、給油の頻度が高くなる傾向にあります。特にガソリンスタンドが少ない山間部や郊外を走る際には、航続距離への不安を感じる一因となる可能性があります。
そのため、多くのオーナーが自身のライディングスタイルに合わせて、後述するようなタンク容量を増やすための工夫を検討することになります。ダックス125の使い勝手をさらに向上させる上で、この3.8Lという数値をどう捉えるかが、カスタマイズの第一歩になると考えられます。
満タンで何キロ?航続距離の目安
ダックス125が満タンの状態でどれくらいの距離を走れるのかは、多くのオーナーが気にする点です。航続距離は、燃費性能と燃料タンク容量によって決まります。
ホンダが公表しているWMTCモード値(国際基準の燃費測定法)によると、ダックス125の燃費は1リッターあたり約55.0km(2名乗車時)とされています。これを基に計算すると、満タン時の理論的な航続距離は「3.8L × 55.0km/L = 209km」となります。ただし、これはあくまでカタログ値であり、実際の燃費は走行状況や運転スタイル、ライダーの体重などによって変動します。
ユーザーの口コミなどを見ると、実燃費はリッターあたり45kmから60kmの範囲に収まることが多いようです。仮に平均的な実燃費を50km/Lと仮定した場合、航続距離は約190kmとなります。このため、一般的には200kmを前に給油を検討するのが現実的な目安と言えます。ツーリング計画を立てる際には、この数値を基準にルート上のガソリンスタンドの位置を確認しておくことが、安心して楽しむための鍵となります。
ツーリングの安心材料となる携行缶
タンク増設の前に検討できる最も手軽な対策が、ガソリン携行缶の利用です。特別な工具や専門知識がなくても、航続距離を手軽に伸ばすことができます。

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メリット
携行缶の最大の利点は、その手軽さと経済性です。バイク用品店などで1L程度の容量のものが数千円から購入可能で、初期投資を大幅に抑えられます。また、普段は携行せず、長距離ツーリングの時だけ持っていくという柔軟な使い方ができるのも魅力です。リアキャリアなどに固定すれば、車体の外観を大きく損なうこともありません。
デメリットと注意点
一方で、いくつかの注意点も存在します。まず、携行缶からバイク本体のタンクへガソリンを移し替える手間が発生します。また、消防法に適合した金属製の容器を使用する必要があり、セルフサービスのガソリンスタンドでは従業員による給油が必須となるなど、法律上のルールを遵守しなければなりません。
さらに、携行缶を安全に積載するスペースの確保も課題です。振動で落下したり、転倒時に破損したりしないよう、確実な固定が求められます。これらの点を理解した上で活用すれば、携行缶は非常に有効な選択肢となります。
Gクラフト製などの予備タンクの利点
より本格的でスマートな解決策を求めるなら、市販の予備タンク(サブタンク)の増設が有効な選択肢となります。Gクラフトやミニモトといったパーツメーカーから、ダックス専用設計のサブタンクキットが販売されています。
これらの製品は、車体のフレームにボルトオンで装着できるよう設計されており、バイクの外観に溶け込むスタイリッシュなデザインが魅力です。一度取り付けてしまえば、携行缶のように毎回積み下ろしする手間もありません。燃料ホースを接続することで、メインタンクと同様にコック操作だけで燃料を供給できるようになるため、利便性は格段に向上します。
ただし、デメリットとしてはコストが挙げられます。製品にもよりますが、タンク本体や取り付けステー、ホース類などを含めると数万円程度の費用がかかるのが一般的です。また、取り付けには基本的な工具と作業知識が必要となり、車体重量がわずかに増加することで操縦安定性に微細な影響を与える可能性もゼロではありません。これらの要素を総合的に判断し、自分のスキルや予算に合った製品を選ぶことが大切です。



ダックス125タンク容量増設の多様な選択肢
この章のポイント
- 主なタンクの増設方法と選択肢
- 溶接によるタンク容量アップ加工
- 他車種流用ビッグタンクという選択
- ステーを利用したサブタンクの自作
- 増設時に注意すべきワンウェイバルブ
主なタンクの増設方法と選択肢
ダックス125のタンク容量を本格的に増設するには、いくつかの方法が考えられます。それぞれにメリット、デメリット、そして求められる技術レベルや費用が異なるため、自身の目的やスキルに合わせて最適な方法を選択することが求められます。

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具体的には、以下の3つのアプローチが主流です。
- 純正タンクの加工: 純正タンクを一度切断し、金属板を溶接してかさ上げすることで容量を増やす方法です。
- ビッグタンクへの換装: 他車種のより大きなタンクを流用したり、社外品の大型タンクを取り付けたりする方法です。
- サブタンクの自作: 汎用のタンクとステーを組み合わせて、オリジナルのサブタンクシステムを構築する方法です。
以下の表は、これらの方法を比較しまとめたものです。
増設方法 | 費用の目安 | 難易度 | メリット | デメリット |
タンク容量アップ加工 | 高い | 高 | 見た目を損なわない | 専門技術が必要、後戻り不可 |
他車種流用ビッグタンク | 中〜高 | 高 | 大幅な容量アップが可能 | 要加工、車体バランスが変化 |
サブタンクの自作 | 低〜中 | 中 | 自由度が高い、低コスト | 安全性の確保、技術力が必要 |
以降のセクションで、それぞれの方法についてより詳しく解説していきます。
溶接によるタンク容量アップ加工
純正の外観を極力維持したままタンク容量を増やしたい場合に選ばれるのが、溶接によるタンク容量アップ加工です。この方法は、バイクのカスタムを専門とするショップや鉄工所などに依頼するのが一般的です。
作業の基本的な流れは、まず純正の燃料タンクを取り外し、内部のガソリンを完全に抜いて洗浄します。その後、タンクを上部あるいは中央で切断し、その間に同じ材質の金属板(鉄やステンレス)を挟み込む形で溶接してタンクをかさ上げします。これにより、物理的にタンクの容積を拡大させます。例えば、4cmかさ上げすることで約3Lの容量アップを実現した事例もあります。

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この手法の最大のメリットは、ダックス本来のT字型プレスフレームの美しいラインを崩すことなく、航続距離を大幅に延長できる点です。しかし、専門的な溶接技術と塗装技術が必要なため、費用は高額になる傾向があります。また、一度加工すると元に戻すことはできません。燃料漏れのリスクを完全に排除するためにも、信頼できるプロフェッショナルに依頼することが不可欠な選択肢となります。
他車種流用ビッグタンクという選択
より大幅な容量アップを目指す場合、他車種のタンクを流用してビッグタンク化するという、上級者向けのカスタムが存在します。特に、同じホンダの原付二種モデルであるCT125ハンターカブのタンク(容量5.3L)などを流用するケースが考えられます。
この方法の魅力は、一度の給油で300km以上の航続が可能になるなど、ツーリング性能を劇的に向上させられる点にあります。純正タンクをはるかに上回る容量は、長距離を走るライダーにとって大きな安心感をもたらします。
しかし、実現へのハードルは非常に高いと言わざるを得ません。ダックス125と他車種ではフレームの形状やタンクの固定方法が全く異なるため、取り付けにはフレーム側の加工や、専用の取り付けステーの製作が必須となります。また、燃料ポンプやホース類の取り回しも変更する必要があり、板金加工や溶接といった高度な技術と知識が求められます。車体全体のバランスやシートとの干渉なども考慮する必要があるため、安易に手を出せるカスタムではないことを理解しておく必要があります。
ステーを利用したサブタンクの自作
市販のキットに満足できない、あるいはコストを抑えつつ自分だけのスタイルを追求したいというライダーには、ステーなどを利用してサブタンクを自作する方法があります。これは、汎用の燃料タンクやオイルキャッチタンクなどを流用し、ホームセンターなどで手に入る金属製のステーやボルトを組み合わせて車体に取り付けるアプローチです。
自作の最大のメリットは、その自由度の高さとコストパフォーマンスです。タンクの形状、容量、取り付け位置などを自分の好みに合わせて自由に設計できます。工夫次第では、市販品よりも低コストで独自のサブタンクシステムを構築することも可能です。

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一方で、最も重要になるのが安全性の確保です。燃料漏れは車両火災に直結する重大なトラブルであり、タンクの固定が不十分だと走行中の振動で脱落する危険性もあります。そのため、十分な強度を持つステーの選定、確実なボルトでの固定、そして燃料ホースの適切な接続と抜け防止対策が不可欠です。相応の金属加工技術とバイクの構造に関する知識がなければ、安全なサブタンクを製作することは困難でしょう。
増設時に注意すべきワンウェイバルブ
サブタンクを増設する際に、見落としてはならない重要な部品が「ワンウェイバルブ(チェックバルブ)」です。この部品は、燃料が一方向にしか流れないように制御する役割を果たします。
サブタンクは多くの場合、純正タンクとは異なる高さに取り付けられます。もし、高さの違う二つのタンクを単純にホースで連結してしまうと、「パスカルの原理(サイホンの原理)」によって、燃料は油面の高いタンクから低いタンクへと自然に移動してしまいます。これにより、コックをOFFにしているにも関わらず、低い位置にあるタンクのキャップからガソリンが溢れ出すという危険な事態を引き起こす可能性があります。

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この現象を防ぐために、ワンウェイバルブが必要となります。それぞれのタンクから出てくる燃料ホースにワンウェイバルブを設置することで、燃料の逆流を防ぎ、意図しないタンク間の燃料移動を阻止できます。特に、サブタンクからメインタンクへの逆流、またその逆のパターンも防ぐために、両方のタンクのラインに設置するとより安全です。バルブが持つわずかな抵抗によって燃料が流れにくくなることもあるため、バルブを垂直に近い角度で取り付けるなど、適切な位置調整も大切なポイントになります。



まとめ:ダックス125タンク容量増設のポイント
この記事では、ダックス125のタンク容量増設に関する様々な方法とその注意点について解説しました。最後に、重要なポイントをまとめます。
- ダックス125の純正タンク容量は3.8L
- 実燃費での航続距離は200km弱が目安
- 最も手軽な対策は消防法適合の携行缶利用
- 携行缶は給油の手間や積載方法に注意が必要
- 市販のサブタンクはスマートで利便性が高い
- Gクラフトなどから専用設計のキットが販売されている
- 市販キットは数万円程度のコストがかかる
- 純正タンクの溶接加工は外観を維持できる
- 溶接加工は高コストで専門技術が不可欠
- CT125など他車種タンクの流用は上級者向けカスタム
- ビッグタンク化は大幅な加工が前提となる
- サブタンクの自作は自由度が高いが安全確保が最優先
- タンク増設時はパスカルの原理に注意
- タンク間の燃料移動を防ぐワンウェイバルブが重要
- 自身のスキルと予算に合った増設方法を選ぶことが鍵